小説『バレンタインデーの奇跡』

昨夜作って冷凍しておいた、まるごといちごのチョコレートシャーベットを取り出し、

「いまから行きますね」

のメールを打とうとしたときだった。

パソコンのキーボードの、"e"だけを認識しない。

故障したのか?

例のとんでもないサポートセンターに電話して、長時間さんざん不愉快な思いをした。

「ああ、ついに行けなかった……」

と、"e"を入力しないという、限られた文字だけで傷心の詩を書こうとしたとき。

なっ、なんと!

ふたたび、キーボードが"e"の文字を認識しはじめたのだ。

思った。

これは、自然の摂理からのメッセージかもしれない。

そうしない方がいいと、脳が判断し、そのように知らず知らずのちに行動する。

その結果として、ある事象が現れる。

これは、超自然的なものではない。

脳科学によって証明されていることだ。